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「十三人の刺客」(1963年、東映)

いきなりの門前切腹場面から始まる。
切腹したのは明石藩江戸家老・間宮。明石藩主・松平斉韶の暴君ぶりを上申書にしたため、幕府老中・土井の門前で切腹したものだった。
ことの発端は中山道を通る参勤交代、尾張藩の武士・牧野が斉韶の接待を任されていたが、斉韶がその息子の妻に手を出したあげく、牧野の息子を切り殺した。息子の妻も自害したが、そのことに一言の侘びも弁明もないまま、明石藩一行は出立していた。
しかし、明石藩主は次の年の老中となる身分の高い御方。土井は暴君ぶりを知りつつも、表向きは間宮の遺骸を明石藩に戻すしかなかった。
土井は密かに目付・島田新左衛門を呼び、斉韶暗殺を命令する。
一方、明石藩では、上申書を提出した間宮の一族は年端もいかない子供まで全員惨殺され、止めようとした明石藩・鬼頭半兵衛はそんな藩主に危機を感じながらも、藩士として藩主を守ることを自らに誓う。


なんだ最初からのこの鋭い緊張感。
左右対称の土井家門前の光景が美しく、そこで切腹している人間だけが異物となって印象に残る。
遠くからの撮影が多いから、日本屋敷の美しさが際立っている。左右対称・一点透視・二点透視から見た時の、柱や襖、畳のへり、鴨居、天井や床の間などの整然とした美しさ。
そして、そこに居住まいを正した人間(武士)が入り込むことによって、更に「型」は冴える。後半のカオスが汚く生き生きと見える効果も抜群だ。
十三人いちの剣客・倉永左平次の剣さばきなんか、美しくて殺気があって、もう惚れ惚れする。この人が嵐寛寿郎さんっていうのか。素晴らしいです。
池上金男(池宮彰一郎)の脚本がこれまた美しく硬質な日本語で、噛み応えがあるというのか、できるだけ消化するために何度も反芻する必要がある。この脚本だけでも値千金であることは間違いない。
それが侍としての矜持や苦しさ、人としての恥辱や悲しみと相乗効果となって、独特の苦さを出している。

リメイクの肝は二つ。
この日本屋敷の美しさをどこまで出せるのか。旧作は白黒なのでそれがいい効果になっている。ピカピカの屋敷なんて野暮ってもんでしょ。カラーで作るとどうしても新しく見えてしまうし、少し古ぼけた感じにすると今度は貧乏臭く見えてしまう。
武士の心情の背景になる部分だから、リアルに手は抜かないでいただきたい。
もう一つは言葉。脚本を一字一句変えないでほしい。
背景とか脚本とかじゃなくて、もっと大事なのはキャストでしょ、と言う人もいるかもしれないが、この映画に関しては別。人間よりも彼らの生き方を決定するその源を大事にしてほしい。
だって、彼らは武士だから。

すべての元凶の斉韶は最初から最後まで話の中心にいて、彼をめぐる刺客たちと明石藩士たちとの攻防戦が繰り広げられる。
ほんとにね、バカ殿一人のために両陣営の使い手たちがなんで戦わなくちゃいけないのかと。理不尽なことこの上ない。
幕府対明石藩(きっかけは尾張藩)だったはずなのに、徐々に、島田新左衛門対鬼頭半兵衛の頭脳戦となっていく面白さは、「四十七人の刺客」(池宮彰一郎著)にも通じる。
半兵衛の生真面目さ、新左衛門の余裕といさぎよさ、もう少し十三人ひとりずつのことを描くのかと思ってたけど、そうする時間がないのと、初手からずっと続いている緊迫感が緩むのを恐れたのかもしれない。ちょっと惜しいような気もするけど。
何度か双方の頭脳戦があった後、ワナをしかけた落合宿で待つ緊張からのイライラが高まっていく場面は、戦乱の世から遠くなった「人斬り」を知らない武士のものだ。
「斬る」イコール「人間を殺す意思」を持つっていうのはやはり怖い。
根源的な忌避と、絶対的に不利な戦いにこれから突き進んでいかなければならない。
でもそれはいつなんだ?いつ明石藩は現れるんだ?
半信半疑で待つことしかできない恐ろしさ。

そしてついに、朝もやの中から馬に乗った明石藩一行が整然とした姿を現す場面は本当に美しい。
ここから始まる長い長い戦闘シーンは、もうカオス状態。
弓と槍で追い込み、切り伏せ、丸太を落とし、でも失敗し、殺しても殺しても減らない(ように見える)絶対的多数の敵たちを追い詰め、逆に追い詰められ、抜け道を見つけられ、必死で道を塞ぎ、斬り、斬られ、ほこりまみれ血まみれのまま立ち向かい、一時撤退し、屋根を走り、また後ろから斬りかかり、命令系統などとっくにどこかにふっとび、守るためではなく殺すためにただ動き、いつの間にか当の殿は一人で逃げてるし(おいこら)………
鉄砲は使わず白兵戦のみにして、「武士道と云ふは死ぬ事と見付けたり」葉隠そのままの覚悟は美しいが、やってることは決してキレイなだけでなく、ドロドロでヨロヨロでむしろ汚い。
やがて元凶の殿が斬られ、合図が鳴って戦いは終わる。
この瞬間から、八面六臂の活躍をしていた武士・平山の気が抜け、生きることに執着し始める。そこに斬りかかる明石藩の武士一人。
平山はさんざん抵抗するが、それはもはや戦いではなく、切り刻まれて平山は死ぬ。
実は一番監督が力を入れてたシーンはここなんじゃないかと思えるほど、その無残さは無意味だ。あまりの無駄な抵抗に、頼むから早く死んでくれ、とこっちが願いたくなるほどに。

この映画の緊迫感と泥くささをどう変えるのか、あるいは変えないのか、三池監督のリメイク版が心から楽しみになってきました。





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