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「おおかみこどもの雨と雪」(2012年、日本)



大学生の花はある日、おおかみおとこに出会い、恋をし、やがて女の子の雪、男の子の雨を産む。だが、おおかみおとこは死んでしまい、花はまだ幼い二人の子供を抱えて山奥の家に移り住む。

美しい里山の風景と、子供たちの可愛らしさにやられまくって、泣きまくったこの作品。特に幼少時の雨の声優さんのすごさは何だ。完全にリアル子供なんだが、子供のままでは演じることができない。そのギリギリで演じているところに鳥肌がたった。
おおかみおとこと花の恋愛も、ゆっくりと自然で、こういう恋愛したかったんだよぉぉぉぉぉー!と思った(笑)
どんどんおおかみの特徴を具現化していく雨の描き方もよかった。人間社会の理屈を理解せず、喜怒哀楽が表情から徐々に無くなっていく過程や、雪と激しい喧嘩をした後の態度が怒りや満足ではなく、姉の理不尽をたしなめた神のようだったのも良かった。
反対に姉の雪が、他人との関わりの中で泣いたり笑ったりしながら成長することを自分で選びとっていくのも素晴らしい。カーテンの向こう側で正体を見せるシーンは美しかった。人は人との関わりの中で生きていく。当たり前だけどそんなことを思った。

細田守氏は、確実に勢いのある映画監督だと思う。観ている間はその勢いに押されて楽しく観られる。
ただ、「時をかける少女」「サマーウォーズ」でもそうだったが、全てを高いところから第三者的に描いている気がする。「こういう人たちがいて、こういうことやって、こうなりました」という報告の映画なのかなと。
「時かけ」「サマウォ」は主人公が高校生だったから、既にその時期を遠く過ぎた私にとってはそれでよかった。だが今回の「おおかみこども」は花の存在がある。二十歳そこそこから二十代後半、その時代も確かに過ぎてはきているけれど、高校生よりは自分に近い世代。
映画を観ていた時は気にならなかった花の存在が、次の日になったらなんだかイライラしてきた。

もし私だったら、おおかみおとこにいろいろ質問しちゃうと思う。だって、好奇心あるもの。それが彼の個性でもあるのだし、今までどんなことがあったのか、どうやって生きてきたのか、一緒に受け止めたいと思うもの。だが、花はそれを全くしない。
花は、おおかみおとこと暮らすこと、おおかみこどもを産むこと(そういう行為をすること)をすんなり受け入れ、奨学金で入った大学をあっさり辞め、周りに助けを求めず、ただひたすら自分だけで解決しようとする。
一人で生きているとはいっても、友人もいないのかな?と思ってたけど、花は友人がいないのではなく友人を作らない人なのかもしれない。おおかみおとこが孤独なのは理由があるが、花がひとりぼっちなのには理由がない。他人を信じていないくせに、笑顔を作りながら他人から手を差し伸べられるのをひたすら待っている。ある意味ずるい女なのかなと。
田舎に引っ越すと、更に花のずるさは増す。本を読んで野菜を作ろうとするがことごとく失敗する。一人途方にくれているところに頑固じいさんがやってきて、スパルタ教育で助けてくれちゃったりする。農園をきっかけに住人の人たちと交流するようになる。
たぶん、花は人見知りなのだろう。問題が起きたらその度ごとに一人でこつこつ解決させていくほうが楽なんだろう。
問題が起きないと動かない。いつも「待ち」の姿勢でいることに、花はもしかしたら気づいてすらいない。
ラスト、雨を追いかけて山に入っていくが、彼女の頭の中からは雪の存在など消えていたのではないか。それは、雨に(人間の基準からみた)問題が起きているからだ。花はいつもさして悩まずに問題が起きたほうを優先してきたから、そっちに流されるのが普通なのだろう。
雨も雪も(ある程度)独立し、現在、花は一人で暮らしている。だが、花としては、一人→いろいろあった→一人に戻った、というだけかもしれない。

今までの社会との関係をあっさり断ち切って新しい男に自分の時間を捧げる女というのは、けっこういる気がする。花が彼女たちと違うのは、意志がないどころか欲望もないということだ。「こっちが得だから」という計算はみじんもない。
ただ、家族を取り巻くいろんな手続きがなんとなく嫌だなあと思って引っ越すし、おおかみおとこも他人の好意も半壊の家もまるっと自然に受け入れる。そんな芸当ができるのは空っぽだからに他ならないのではないか。
怖いよ、この女。

そんな感想、誰もいないんだろうなあ、間違っているんだろうか。と思っていたら、映画を観ている時に少しだけ気になっていたことが繋がって驚いた。
花が何度も草花や湯のみをあげていた写真がある。最初それは花の父親と二人で写っている写真だった。そこにおおかみおとこの免許証が加わり、最後には花の父親の写真が消えているのだ。
花の中で今現在、本当に大切なものは、おおかみおとことの思い出だけなのかもしれない。
ということは、監督それを承知で描いているの?
おおかみおとこの死体が無造作にゴミ収集車に乗せられていくシーンを情け容赦なく描いた監督だったら、それもあるかもしれない。怖い怖い。

そうすると、山に戻っていく雨に向けた花の言葉「しっかり生きて!」も違った意味になってくる。
受け身な母親を金色の目で見下ろす雨は、母と子としての人間界の理屈からとっくに旅だっていたのだろう。
独立、おめでとう。
無事に独立できたことを確認するように、雨は時々遠吠えをする。雪はナレーターとなって客観的に振り返る。
ただ一人、なにも変わらない母親を残して。





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